さて、今日の話題は、ひとりの落語家の生き様、死に様を最後まで描き切るアニメ「昭和元禄落語心中」がとても面白かった話です。
この作品は、雲田はるこさんによる漫画が原作のアニメなんですが、刑務所から出所したばかりの与太郎という主人公を軸にして、ひとりの名落語家、八代目 有楽亭八雲という人物の生涯を、幼年期から老齢期の最後までを描いた作品なんですが、
お話が最初から最後までキレイにまとまっており、題材として落語界の隆盛や衰退を横軸に、ミステリー要素として過去の同じく希代の落語家である盟友、二代目 有楽亭助六とその妻、みよ吉という夫婦の心中事件を伏線としてはらみつつ、お話の伏線回収もお見事で、最後まで飽きずに面白く見ることができる作品となっています。
物語の主人公は、与太郎という若くて能天気な青年なんですが、その主人公から見た有楽亭八雲という人物が、最初から最後まで魅力的に描かれていて、日本舞踊の道から右足を悪くしてしまい、不本意ながら落語の世界に足を踏み入れ、芸を磨いていく若年期、だんだんと頭角を現し、昇り詰めていく青年期、脂の乗った名落語家となり、与太郎という弟子を取って芸を伝える壮年期、そして残りわずかとなった寿命を悟り、最後まであがこうとする老齢期、
生の締め括りとなる死に様と、ファンタジー要素ではありますけど、死後の黄泉の世界までおまけとして描くその物語は、落語や主人公の与太郎という、ライトでキャッチーな題材をクッション材料として、そこまで重たくなり過ぎず、かといって人の生き死にを描く上で軽くもなり過ぎず、絶妙なバランスで物語は進行しますし、与太郎という人物もキチンと落語の世界で大成し、一人前となっていく成長物語の側面もあり、
人の命の炎はいつか尽き果てても、その芸や人の思いや営みなんかは、次代の世代へと脈々と受け継がれていくという、命の持つテーマみたいなものもちゃんと描かれていて、最後まで見終わって、とても良くできた作品だと思わず感動してしまいました(笑)
この年末年始に、時間に余裕がある方は、ぜひ一度ご自身でご覧になってみて下さいね。
特に、みよ吉という希代の悪女(?)が出てくるあたりから、物語は加速度的にどんどん面白くなってきますので、後悔はしないと思いますよ。
以上、ひとりの落語家の生き様、死に様を最後まで描き切るアニメ「昭和元禄落語心中」がとても面白かったという話題でした。