さて、今日は京アニ事件後に、山田尚子監督が描いた「平家物語」という作品がとても感慨深いという話題です。
ただ、この件については、事実関係を調べても根拠となる事柄は限られていますし、あくまで僕の個人的な推測と感想となりますので悪しからずにご了承お願いします。
まず、あの痛ましい京都アニメーション放火事件が起きたのが2019年7月の出来事でした。
僕も、京都アニメーションが作る作品は、どれもだいたい好きで、山田尚子監督の「けいおん!」なんかも、放送当時にエピフォンのレスポールギターを思わず購入してしまうくらいのにわかファンぶりでしたので、当時はかなり衝撃を受けたのをよく覚えています。
たぶん、時代は違いますが、ビートルズが好きだった人が、ジョン・レノンが撃たれて亡くなってしまった時と同じくらいの衝撃的なニュースだったと思います。
そして、山田尚子監督が「平家物語」という作品を描いたのが2022年の1月から3月で、アニメの企画自体は2020年に立ち上がったようです。
このアニメは、京都アニメーションが製作したものではなく、山田尚子監督が移籍して、サイエンスSARUという制作会社で作られた作品ですし、製作委員会方式の商業アニメとして作られていますので、山田尚子監督のインタビューなんかを聞いていても、京都アニメーションの事件のことなんて、当然ですが一切語られていません。
なんですが、山田尚子監督が京アニ事件の後に、最初に世に送り出した作品が、この諸行無常をテーマにした「平家物語」であることに、僕なんかはとても感慨深いと思わざるを得ません。
作品自体は、概ね原作の通り忠実に作られていますし、滅亡する平家の群像劇、諸行無常の世の儚さ、泡のように消えゆく命の数々なんかがドラマチックに描かれていて、とても興味深い作品となっています。
特に、平家がことごとく滅亡していくなかで、図らずも生き残り、後の世に語り継いでいく琵琶法師の役割と、鎮魂の役割を持った、主人公のびわという女性と、安徳天皇の母であり、息子や一族郎党が泡のように消えていくなかで、独り残された平徳子というキャラクターに、僕は山田尚子監督を重ねずにはいられませんでした。
なんとなく思うんですが、山田尚子監督が京アニ事件後に関して、何もコメントをされないのは、たぶん自分のなかで、事件に関するいろんな感情が入り混じっていて、とても整理しきれないからじゃないかと思うんです。
僕自身、書き手として例えばなんですが、自分の父親に関しては、なにか記事にしようと思っても、気持ちの整理がつかなくて、ひとつの感情だけで説明できない複雑な思いが入り混じって、どうしても記事にできない部分があります。
同じように、山田尚子監督も言葉にできない思いを、「平家物語」という作品に隠喩(メタファー)として込めたような気がしてなりません。
願わくば、事件で亡くなった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
以上、京アニ事件後に、山田尚子監督が描いた「平家物語」という作品がとても感慨深いという話題でした。